原爆症訴訟 国、上告を断念 仙台、大阪以外は継続示唆【2008.06.10】(産経新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080610-00000121-san-soci

 原爆症認定訴訟で、国は10日、原告全員を原爆症と認めた仙台、大阪両高裁判決について、上告断念を決めた。舛添要一厚生労働相が同日の閣議後会見で正式に表明した。
 上告期限は仙台判決が11日、大阪判決が13日となっているが、原告側が上告を見送れば、同種の訴訟では確定の初のケースとなる。
 大きな区切りを迎えた原爆症認定訴訟だが、仙台、大阪両高裁のほかに現在、4高裁15地裁で係争中。舛添厚労相は、残りの訴訟については「法務省と相談しながら、他の高裁の判断を仰ぐ必要がある」として、継続を示唆した。
 判決後の6月5日、原告と弁護団は舛添厚労相に面会し、上告断念を要請。その際、厚労相は「首相の決断をいただき、来週中に正式に決めたい」と話していた。
 原告と弁護団は、訴訟の全面解決に向け、原告305人全員の原爆症認定と認定基準のさらなる見直しを求めている。
 国の上告断念の正式発表を受け、全国原告団弁護団は、厚労省で記者会見し、原告の求めに応じない国の姿勢について怒りと落胆の声を上げた。
 原告団の山本英典団長はは「裁判がまだ続くとなると、原告の精神的な不安はさらに深くなっていく。他の高裁判断をみるというのは非人道的で冷酷すぎる」と、表情は硬いまま。仙台高裁原告の波多野明美さんは「納得はしていません。全面解決をやってもらいたい」と涙目で訴えた。

 ◆厚労省の見解骨子◆
・仙台、大阪両高裁判決を精査した結果、最高裁で争うまでの強い理由はないと判断し、上告しないことにした
・両高裁の原告の原爆症認定について、所要の手続きを進める
・両高裁判決を被爆者医療分科会に報告し、「総合判定」で審査する際の資料とする
・各地で係争中の原告については、他の高裁の判決を仰ぐ必要がある。両高裁判決と同じ状況の人は「総合判定」で審査する