原爆症認定:全員の救済目指す 新基準で、原告ら憤り隠さず 審査方針に失望 /広島【2008.03.18】(毎日新聞)

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 「あくまで全員の救済を目指す」――。原爆症認定基準を大幅に緩和する国の新たな審査方針が決まった17日、集団訴訟の原告や支援者らは、全員認定の確約が得られなかったことへの憤りや不安を口にした。4月の新基準導入まで残された時間はわずかだが、要求の実現に尽くすことを表明した。【宇城昇、井上梢】
 ◇国の審査方針に失望
 審査方針の決定を受けて、原告らは中区の広島弁護士会館で記者会見。「いちばん大事な(被爆者救済の)理念が語られていない」。原告団の玉本晴英副団長(77)=安佐南区=は、国の方針に失望の色を隠さなかった。最終段階で「より被爆者救済の立場に立つ」などの文章が追加されたが、あっさりした表現に拍子抜けしたという。「原爆訴訟を支援する県民会議」の渡辺力人事務局長(81)も「これまで被爆者を見捨ててきた反省も釈明も触れられていない」と切り捨てた。
 原告たちが不安を抱くのは、新基準から外れた場合に回る個別審査の内容が判然としないからだ。裁判で勝訴した原告が、新基準で認められない懸念は解消されていない。1審で勝訴した原告で、原爆投下13日後に入市被爆した大江賀美子さん(78)=佐伯区=は新基準では個別審査に回る。「認定されると思っていた。残念でたまらない」とうつむいた。15日には与党プロジェクトチーム(PT)との懇談会に出席し、前向きな言葉に期待していただけに「全員の認定を」と声を振り絞った。
 広島訴訟弁護団の二国則昭弁護士は「4月からの新基準導入は物理的に阻止できないが、申請を却下した場合は直ちに裁判手続きに入り、認定行政の不当性を訴える。やる気になれば4月までに作り直せるはず」と語り、与党PTなどへの働きかけを強める考えを示した。