霞目・四郎丸空襲:「偵察兼ねた組織的爆撃」 加藤さん、仮説まとめ出版 /宮城【2008.03.11】(毎日新聞)

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 ◇岩手在住、元高校教師・加藤さん
 3月10日は仙台飛行場(仙台市若林区霞目)が2機のB29に襲われた霞目・四郎丸空襲63年の記念日。吹雪の蔵王山中・不忘山(ふぼうさん)(七ケ宿町)には、これと別の3機のB29が墜落している。東京大空襲爆撃機が迷い込んで空襲したとの説に疑問を投げかけ「偵察を兼ねた組織的な爆撃だったのでは」とする研究成果を「岩手・戦争を記録する会」事務局長の元高校教師、加藤昭雄さん(62)=岩手県花巻市=がまとめ、10日、出版した。【石川宏】
 ◇迷うには遠過ぎる/3機墜落説明できない
 「東京大空襲の夜 B29墜落の謎と東北空襲」(本の森、1680円)。東京大空襲と同夜、東北では、▽仙台▽平(福島県いわき市)▽盛岡▽上北郡(青森県十和田市付近)の4カ所でB29による空襲があった。墜落した3機も含め8機は将来の本格的な空襲の偵察のため、東北に向かった……という仮説だ。
 (1)迷うにしては東京―盛岡・仙台は遠すぎ、東京大空襲のB29と同じ爆弾を積載していたなら、航続距離的に出撃地のサイパンに帰還できない(2)複数の爆撃機が迷うとは考えにくく、特に3機が時間差を置いて不忘山に墜落した事実が説明できない――というのがその理由。この夜、秋田・山形では空襲がなかったが、墜落した3機は両県に偵察兼爆撃に向かう途中で吹雪で墜落した、と解釈できるという。
 後に仙台市山形市では墜落の残骸(ざんがい)を展示した「郷土防衛征空必勝展覧会」が開かれるが、加藤さんは山形市側で見学した男性から「残骸の中の東北地方の地図は主要な都市に赤丸印がつけられ、山形市にも赤丸印がついているのをみて恐怖に襲われたのを覚えている」という手紙を受け取っている。
 加藤さんは「5年間調べ、東京の国会図書館に何度も通ったが仮説を証明することまではできなかった。謎だらけだが、空襲や墜落は偶然とは考えづらい」と話している。
 また作家の早乙女勝元さん(75)は「航続距離が遠すぎる、墜落時刻が東京大空襲に先立ち早過ぎるなど、なお謎は多い。しかし3月10日の大空襲は東京の下町だけと思っている人が多い中、貴重な研究。出版をきっかけに東北空襲の調査研究がさらに進めば、この本が投げかける意義も大きい」と話した。
 A5判、253ページ。東北各地の主要書店で10日販売開始。問い合わせは加藤さん(0198・23・3883)へ。
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