別子銅山:戦時中強制連行、中国の張さんが初めて再訪 新居浜で市民らに講演 /愛媛【2008.05.21】(毎日新聞)

◇「歴史忘れず、友好を」
 「寒さと飢えの記憶はまだ強く覚えています」。中国から来日した張志祥さん(84)は20日、第二次世界大戦中に強制連行され過酷な労働を強いられた新居浜市別子銅山を戦後初めて再訪し、苦しい経験を話した。市民らは「繰り返してはならない」「多くの人に伝えたい」と思いを新たにしていた。
 張さんは車椅子に乗り、収容所の跡地を目の当たりにした。現地で開かれた追悼式後、「多くの人が強制連行について考えて知ってくださったことに心から感謝している」と話したうえで、「亡くなった仲間を思い出すと心苦しい」と明かした。
 同市市民文化センターで開かれた講演会には市民や地元高校生約80人のほか、中国駐大阪総領事館の職員、佐々木龍市長も出席。苦しい経験を語った張さんが「過ぎたことは歴史となった。歴史を忘れずに、日中友好を築きたい」と訴えると、大きな拍手が送られた。
 県立新居浜南高2年の磯野弘貴君(16)は「歴史の授業よりも、戦争について詳しく分かった。一人でも多くの人に伝えたい」と話した。また、別子銅山で戦後約20年間働いた村上健一さん(70)=新居浜市西連寺町2=は「坑内で長年働きながら数年前まで事実を知らなかった。わずか1年間で多くの人が亡くなったのはショックなこと。(張さんの話した)『二度と繰り返してはいけない』という言葉は重みがある」と語った。【加藤小夜】