<映画「靖国」>「結論は観客の中に」李纓監督インタビュー【2008.05.08】(Record China)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080508-00000043-rcdc-cn

2008年5月3日、さまざまな紆余曲折を経て公開となった話題の映画「靖国 YASUKUNI」。同作は、日本芸術文化振興基金などの助成を受けた日中韓の合作映画。中国人の監督・李纓(リ・イン)氏が10年間に渡って撮り続けてきた靖国神社を巡る記録映像とともに、靖国神社のご神体である「靖国刀」を製作した刀匠の映像を象徴的に用いながら、日本のアジア侵略の歴史や戦時中の「靖国精神」、日本社会が戦争に対して抱える複雑な心情を淡々と伝える作品として話題を呼んでいる。
東京・渋谷のシネ・アミューズで公開された本作は順次、全国20館で公開される。このほど、日本での初日には保安上の理由で出席せず、中国に滞在している李監督が中国の大手ポータルサイト「網易(NETEASE)」のインタビューに応じ、作品について語った。【 その他の写真 】
■「靖国YASUKUNI」制作の動機
日本での生活が長くなるにつれ、歴史観や社会問題に対する受け止め方など、中国人と日本人の間に大きな隔たりがあることを思い知ったというのが理由です。
中でも衝撃的だったのは、97年に南京大虐殺60周年を迎えた折に日本で開かれた討論会での出来事です。その会場では「南京」というドキュメンタリー映画が上映されました。これは戦前の日本軍によって撮影された作品ですが、この上映中に1000人の観衆の中から拍手が沸き起こり、わたしは機関銃に打たれたような衝撃を受けました。拍手を送った中には、大学教授など、きわめて教養の高い一般人も含まれていました。
ご存知の通り、日本は表現の自由が保障されています。戦争に関する史実についても、さまざまな書籍や映画、報道が多角的な事実を伝えており、日本人の理解が偏っているということはないはずです。にも関わらず、いまだに戦時中の歴史を1つの栄誉と感じている人がいるという事実。そして戦死した者はすべて英雄として祀られている事実。わたしは被侵略国の国民の立場としてではなく、事実そのものを語る立場の者として、映画を撮ろうと決心したのです。
■一部から「反日映画」と非難されたことについて
一部のメディアや政治家から、確かに「靖国YASUKUNI」は「反日的だ」と非難されましたが、わたしはこの言葉に非常に反感を覚えます。「反日」という言葉は民族主義感情を極端に煽動するものです。日中戦争が勃発する前、日本政府によってしきりにこの「反日」という語句が使われたことからも分かるように、これは民族感情を刺激する非常に危険な言葉なのです。また「靖国問題」はあくまで日本社会の一部にすぎないのであり、日本社会の全てを表すものではありません。
■公開後の反響について
作品を見た観客の反応は良好なものが多いようです。観客はおおむね理性的に観賞したようですが、そもそもこの作品はある種の距離感と理性を以って表現された作品ですから、当然の反応と言えるでしょう。
わたしがこの作品で伝えたかったのは、「靖国神社」がどのような空間で、その空間において英霊が何を象徴しているのか、ということであり、これらについてそれぞれの観客に考えてもらいたかったのです。戦後何十年も経ってなお、靖国問題がいまだ解決されず、多くの矛盾を抱えているのは一体何故なのか?我々はこの問題にどう対したらよいのか?観客一人ひとりに考えていただきたいと思います。(翻訳・編集/愛玉)