『週刊新潮』2008年3月20日号 P49-50

6 助成金750万円の反日映画靖国を巡る「検閲」騒動
 4月12日に公開される映画『靖国 YASUKUNI』(李纓監督)には、南京事件の「捏造写真」が使われている。どう見ても「反日映画」としか思えないこの映画に、わが国の助成金が出ていたから、国会議員が試写を求めた。これに対し配給側は「検閲」と反発する騒動になっている。
 本誌(昨年12月20日号)はこの映画に、中国が反日プロパガンダに用いた南京事件の「捏造写真」が使われ、文部科学省所管の独立行政法人日本芸術文化振興会から750万円の助成金が支出された事実を報じた。
 振興会は政府の出資と民間の寄付を原資とし、運用益で各種の芸術文化活動に支援を行なっている。我々の血税が回りまわって「反日映画」に使われているわけだから、国会議員が問題視するのは当然であろう。
 自民党稲田朋美衆議院議員と、同議員が会長を務める自民党若手の勉強会「伝統と創造の会」が、2月12日に文化庁を通じて試写を要請。一旦、3月12日に東京国立近代美術館フィルムセンターでの試写をセッティングしたが、2月下旬になって、李監督が難色を示し出した。「伝統と創造の会」事務局長の赤池誠章衆議院議員はこう言う。
「自分の映画に批判的な国会議員が試写会を開こうとしているという話を聞いて、監督は絶対に許可できないと主張したんだそうです」
 配給・宣伝会社側は「検閲ではないか」と反発していたが、一転して3月3日、全国会議員を対象に、『靖国』の試写会の案内をファクシミリで送信。
〈本作品の劇場公開に先駆け、ぜひ国会議員の皆様にご高覧頂きたく、文化庁の協力による国会議員向けの特別緊急試写会をご案内させていただきます〉(アルゴ・ピクチャーズ
 なぜか稲田議員や赤池議員にはこの案内が送られてこなかったそうだが、アルゴでは送り漏れのあった議員には郵送したという。

「結社の自由を侵害」
「検閲」と反発しておきながら、文化庁の協力を得て国会議員向けに試写会の告知を送るなど、配給・宣伝会社の対応には一貫性がない。試写を計画していた稲田議員らも、欺かれた格好である。
「アルゴのチラシを見ると、田原総一朗氏も推奨している立派な映画と書かれている。私たちが計画した試写会は、『靖国』が客観的なドキュメンタリーになっているのかどうかを検証するのが趣旨だったのに、全く違うものにされてしまっていたのです」(赤池議員)
 アルゴ・ピクチャーズの説明は、
「税金が入っていたとしても、事前に見せるのは問題があると思っています。批判的な意見を持つ一部の議員だけでなく、多くの国会議員に見ていただくべきだと思っています」
 この「検閲」騒動に首を突っ込んできたのが朝日新聞(3月9日付朝刊)。配給側の「事実上の検閲」というコメントを見出しにして紹介し、何やら、かつてNHKの「従軍慰安婦」番組を見た国会議員が内容の改変を求めた、と朝日が報じた事件を彷彿とさせる。
「試写会を検閲と表現するなら、私たちは結社の自由を侵害されたことになります」(赤池議員)
 稲田議員はこう語る。
「私たちの試写会は、決して検閲ではありません。750万円という助成金がこの映画に投入されていることが妥当かを検討するためです。税金が客観性を欠く反日映画に使われているわけですから、試写を見て、文化庁と意見交換した上で、返還してもらえないか、話をしてみるつもりです」
 国会で、助成金を出した張本人を追及してほしい。