七尾強制連行訴訟:涙で謝罪と賠償求める 原告の暢さん、意見陳述し結審 /石川【2008.03.29】(毎日新聞)

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◇10月に判決
 太平洋戦争中に石川県七尾市に強制連行され過酷な港湾労働を強いられたとして、中国人男性5人と遺族1人が国と七尾海陸運送を相手に損害賠償などを求めている訴訟の口頭弁論が28日、金沢地裁(倉田慎也裁判長)であった。原告の暢同道さん(83)が意見陳述し、結審した。判決は10月31日。
 暢さんは「1944年に日本軍に捕らえられ、七尾市まで連行された。100キロの麻袋を担がされ、食事は1日1食だった」と証言。また「荷降ろし作業中に、はしけから落ち、こん棒で殴られた。腰を痛め、一生治らない障害を負った」と述べ、「謝罪と賠償がなければ納得できない」と涙を流した。岩淵正明弁護士は「原告らは高齢化で裁判のために日本に来ることさえ出来なくなっている。強制連行、強制労働の事実を認めてもらうことが共通の願い」と弁論した。
国側はこれまでの弁論で、戦後処理に関する個人請求権について「52年の日華平和条約などで放棄されている」などと主張。強制連行や労働実態については事実関係の認否を行っていない。また企業側は、当時中国人労働者を管理していた七尾華工管理事務所が46年に作成した調査報告書を基に、安全配慮義務違反はなかったと主張している。
 裁判は05年7月に最初の提訴があり、原告6人中5人が来日して法廷で意見陳述した。また昨年2月には七尾市で現場検証も行った。結審後に開いた報告集会で、岩淵弁護士は「裁判所には当時の状況を分かってもらえたと思う。(勝訴を)期待して判決に臨みたい」と述べた。
 同様の強制連行訴訟では、最高裁が07年4月、中国人の賠償請求権を否定した判決を下している。【栗原伸夫】