<原爆症認定>厚労省新基準、原告100人が認定されぬ公算【2008.03.17】(毎日新聞)

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 原爆症認定集団訴訟原告団は17日、4月以降の新たな審査方針を決めた厚生労働省被爆者医療分科会の終了後に会見し、新基準に照らすと原告約300人のうち認定されるのは約200人にとどまるとの見通しを示した。原告側は今後も訴訟を継続するとともに、全員が認定される基準への改訂を求め、見直しが進まない場合は、特例的な全員救済の政治解決を与野党に働き掛けるとしている。
 新たな審査方針は、被ばく線量から病気になる可能性を算出した「原因確率」のみの判断を改め、爆心地から3.5キロ以内の被爆など一定要件を満たせば原則認定するなど、救済範囲を大幅に広げた。しかし▽3.5キロ以上離れて被爆した人▽原爆投下から2週間以上たって爆心地付近に入った人▽肝機能障害や甲状腺機能障害の患者−−などは、裁判で認定されたケースがありながら、新基準では却下される可能性がある。
 原告団によると、新基準なら認定されるとみられる原告は305人中200人前後。約50人は却下され、残り約50人は認定要件には該当せず個別審査で判断されると予測する。ただし今から再申請すると、認められても医療特別手当が過去にさかのぼって給付されないため、あくまで当初の却下処分の取り消しを求めるという。
 また、厚労省が4月以降、1審で国が敗訴した原告82人に対する控訴を取り下げたり、再申請がなくても自主的に一部を認定に変更した場合も、原告団から離脱せずに却下に対する慰謝料請求としての裁判を続けるとしている。
 原告・弁護団は会見で、「これまでの判決と新基準は矛盾する」と批判した。3月の東京地裁判決で敗訴した山本英典原告団長は「前進であることは間違いないが、がっかりした。原告全員が報われると思っていたのに……」と沈んだ表情で語った。
 全国弁護団の宮原哲朗事務局長は「被害実態を反映した基準に改訂しないと、裁判は解決しない。早期解決のため、基準から漏れる人も含めた全員認定の政治決断も求める」と話した。【清水健二】