酒田港強制連行 中国人の賠償請求棄却 山形地裁【2008.02.13】(河北新報)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080213-00000015-khk-l06

 太平洋戦争中、中国から酒田港に強制連行され、過酷な労働を強いられたとして、中国人男性6人が国と酒田海陸運送(旧酒田港湾運送)に計約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、山形地裁は12日、強制労働などの不法行為は認めたものの請求は棄却した。原告側は控訴する方針。
 片瀬敏寿裁判長は同様の訴訟で、昨年4月の最高裁判決を踏襲。「1972年の日中共同声明で中国人個人の賠償請求権は放棄され、裁判で行使できない」と判断した。
 一方で、「原告らを外出や逃亡できない施設に収容するなど、劣悪な環境で労働を強制した」と、強制連行と過酷な労働の事実を認定。「労働者の生命や健康に配慮する義務があったが、何ら是正措置を取らなかった」として、被告らに安全配慮義務違反があったと指摘した。
 判決によると、原告らはだまされたり暴力を振るわれたりしながら、貨物船に乗せられて日本に連行され、酒田港で石炭や船の荷物の運搬作業を強いられた。
 訴訟は、男性6人が2004年12月に提訴。昨年6月、原告側は地裁に和解勧告するよう求めたが被告側は拒否。原告6人のうち、昨年までに3人が亡くなっている。
◎「予想外」肩落とす/原告の檀さん「最後まで闘う」
 酒田港強制連行・労働訴訟の原告団の一人、檀蔭春さん(87)は12日、山形市内で弁護団とともに記者会見し、原告の請求を棄却した山形地裁判決について「予想外の結果。とても失望している」と肩を落とした。
 檀さんは1944年8月、酒田港に強制連行された。食事は蒸しパン2個だけで一日12時間以上も働かされた。賃金が払われることはなく、不満を訴えると日本人に殴られることもあったという。
 訴訟では、地裁が酒田港岸壁で実施した現場検証にも立ち会い、裁判官らに当時の過酷な労働体験を証言した。檀さんは判決を受け、「日中共同声明後、日本は強制連行の被害者に何をしてくれたというのか。時間がたつと、国の債務は消滅してしまうのか。判決は無効だ。最後まで闘い続ける」と憤った。
 2004年12月の提訴時に檀さんを含め6人いた原告は、既に3人が死亡している。会見で弁護団は「判決が指摘した不法行為を真摯(しんし)に受け止め、国と企業は80歳を超えた原告の命あるうちに、勇気ある決断をすべきだ」との声明文を発表した。
 弁護団は13日、酒田市役所と酒田商工会議所を訪れ、解決のための協力を要請するほか、被告企業にも赴く。原告代理人の外塚功弁護士は「判決を踏まえて和解協議を進め、全面解決を実現したい」と決意を語った。