残留孤児笑いと涙 太宰府市の劇団道化8月初演へ 帰国後の生活舞台に【2008.01.17】(西日本新聞)

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 福岡県太宰府市の劇団道化(篠崎省吾理事長)が、中国残留孤児をテーマにした新作「吉(きつ)林(りん)食堂−おはぎの美(お)味(い)しい中華料理店」に取り組んでいる。残留孤児の家族が日本で暮らす悩みを、笑いと涙で描く舞台で、戦後の問題としてとらえてもらうため、終戦記念日の8月15日に福岡市で初公演。同16日には残留孤児の家族、中国人留学生らが参加したシンポジウムも開く。
 九州初のプロの劇団として1965年に旗揚げした道化は、地域に根差した演劇活動を展開してきた。一昨年は、太平洋戦争中に特攻隊の基地があった鹿児島県南九州市の旧知覧町を舞台にした「知覧・青春」を制作。昨年は春に中国・北京で長期公演。今年4月に残留孤児の帰国者の支援法が改正されることもあって、残留孤児の問題を初めてテーマに選んだ。
 脚本は「今も苦労して生活している残留孤児とその家族が、周囲にたくさんいることを伝えたい」と、道化の篠崎理事長(49)と中村芳子さん(53)が共同で書き下ろした。
 「吉林食堂」は、福岡市・西新の中華料理店が舞台。日本語が不自由な残留孤児の父親と、暮らしを支えるため高校中退した息子、高校受験を控えた娘、そして、父親とともに帰国した妹、佐賀に住む祖母が登場する。タイトルの「おはぎ」は、終戦前の混乱の中、中国・旧満州から引き揚げる際に生き別れになった母親が幼い兄、妹に持たせた、おはぎにちなんでいる。
 つらい記憶と重なるおはぎを、兄も妹も長年、口にすることができなかった。苦労しながらも、徐々に日本での暮らしに慣れる一家。お盆の日。ようやく食べられるようになったおはぎを家族で味わいながら、今の暮らしをもたらしてくれた亡き母に感謝する‐。演出は同県前原市在住の演出家北村直樹さん(47)。
 初公演は8月15‐17日、福岡市博多区祇園町の「ぽんプラザホール」で。シンポジウムは16日の公演後に予定。以後、高校、中学校にも出前公演をするという。 (筑紫支局・津田祐一)