【2007.7.11】<集団自決記述削除>沖縄県議会が異例の再可決

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070711-00000060-mai-pol

 沖縄県議会は11日の本会議で、太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決を巡り、日本軍の強制性の記述を削除するよう求めた文部科学省の検定意見の撤回と、強制性の記述回復を求める意見書を再度、全会一致で可決した。沖縄では検定意見の撤回を求める超党派の県民大会開催を模索する動きがあり、教科書問題は「島ぐるみ」の抗議という新局面を迎えることになりそうだ。
 県議会は6月22日に同趣旨の意見書を可決し、県や市町村長会、市町村議長会とともに文科省に撤回を要請したが、文科省がこれに応じていない。同趣旨の意見書を再び可決することに県議会事務局は「恐らく初めて」としている。
 意見書は文科省の検定を(1)集団自決を巡る日本軍隊長の命令の有無を争点に係争中の民事訴訟を理由にし、隊長側の主張だけを取り上げている(2)検定の経緯が明らかにされていない――などとして「到底容認できない」と批判。さらに県議会を含む沖縄の全42自治体議会が同趣旨の意見書を可決したことを挙げ「県民の総意が明らかにされた重みへの配慮がなく遺憾。集団自決は日本軍による関与なしに起こりえなかったことは紛れもない事実」としている。【三森輝久】


この問題について、簡単に経緯をまとめましょう。


この問題の発端は、今年の3月30日に、2008年度から使用される高校教科書の検定結果が発表されたところ、沖縄戦での日本軍が住民に対し集団自決を強制した記述に修正意見が付いたことです。文部科学省の主張は、「最近の学説状況の変化」、「日本軍元戦隊長の証言」などを根拠としているようです。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_01.html


この検定結果が出て以降、沖縄では教育界・学術界をはじめ、マスコミや市民団体などの大きな反対運動が巻き起こりました。特に、『鉄の暴風』を刊行し渡嘉敷島の強制集団自決を最も早く紹介した沖縄タイムスは、非常にこの問題に関して力を入れているようです(大阪地裁で提訴されている大江健三郎氏と岩波書店を被告とする訴訟とも関連していると思われます)。
▽「集団自決」軍関与を否定/08年度教科書検定 - 沖縄タイムス (3月31日12時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703311300_01.html
▽高教組・沖教組「歴史歪曲 許さぬ」/「集団自決」修正 - 沖縄タイムス (4月3日15時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704031700_02.html
▽「集団自決」修正/知事、軍関与削除に遺憾 - 沖縄タイムス (4月20日18時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704201700_02.html
沖縄戦歪曲 抗議の声を/来月9日 県民大会 - 沖縄タイムス (5月3日12時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_02.html
▽「集団自決」修正/退職教職員3団体が抗議声明 - 沖縄タイムス (5月9日12時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_05.html


このような沖縄世論を背景に、県下の自治体で次々と検定修正撤回を要求する意見書が決議されはじめました。なお、7月11日時点において、県下41自治体のすべてにおいて、撤回を要求する意見書が決議されています。
糸満議会も撤回要求/「集団自決」修正 - 沖縄タイムス (5月12日12時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705121300_09.html
豊見城市議会、検定撤回求め意見書/「集団自決」修正 - 沖縄タイムス (5月14日15時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705141700_01.html
▽座間味・渡嘉敷 撤回要求へ/「集団自決」軍関与削除 - 沖縄タイムス (5月23日15時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705231700_03.html


このような流れの中、6月22日に沖縄議会は、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍の関与を削除した文部科学省教科書検定の撤回、記述の回復を求める意見書案を可決しました。この意見書が、今回(7月11日)に再可決された意見書の当初の意見書です。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706221700_01.html
(意見書全文も掲載されています)。


7月4日には、沖縄県副知事など県内の行政・議会六団体の代表が、文部科学省へ直接出向き、検定の撤回を要請しましたが、『文科省の布村幸彦審議官は「教科用図書検定調査審議会が決めたことには口出しできない」と述べるにとどめ、撤回を困難視する従来姿勢を堅持した。』として、沖縄側の要請を否定しました。
▽国、検定撤回また否定/「集団自決」修正 - 沖縄タイムス (5日12時0分)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707051300_01.html


このような国側の姿勢に対し、今回、異例ともいうべき修正検定撤回の意見書の再可決をすることとなったわけです。
▽「検定撤回」再度可決へ 「集団自決」軍強制削除
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070706-00000014-ryu-oki


今回、このような教科書検定をめぐる一連の流れを見ていて気づくのは、国側の主張の根拠が非常に曖昧であり、恣意的であることです。
根拠として挙げられている「最近の学説状況の変化」と言っても、すでに多数の証言や客観的状況(例えば、住民への手榴弾の配布)などから、ほぼ学術状況は定まっていると言えるでしょう。また、「日本軍元戦隊長の証言」もその根拠の一つとして挙げていますが、当時の命令者として疑われている人物の証言であり、客観的な史料と言えまるものではありません。
これまでも、文科省は、異説があることを根拠に従軍慰安婦南京大虐殺など、日本の戦争責任に関する記述を削除しようとしてきた経緯があります。今回の問題も、まさしくこの構図に一致するものです。
一役所に過ぎない文科省が、子供の歴史認識を左右してしまう現在の制度については、重大な問題として追及すべきだと思われます。


(K−K)