【2007.6.29】<西松建設>株主総会で「強制連行ない」 最高裁判決を無視

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070629-00000115-mai-soci

 戦時中の強制連行を巡り中国人から賠償を求められた訴訟で4月に最高裁判決を受けた西松建設(東京都港区)が28日の株主総会で、中国人原告を支援する株主の質問に「強制連行の事実はなかったと確信している」と答えていたことが分かった。被害事実を認めた2審を最高裁として初めて追認した判決を無視した形で、支援者は「勝手な解釈は許せない」と反発している。
 同社は「2審の広島高裁判決(04年)は被害を認めた部分も含め全面的に破棄された」との見解を表明。最高裁が異例の付言で「西松建設などの関係者は被害救済に向けた努力をすることが期待される」と自主解決を促した点も「付言は意見にすぎない。判決で全面的に解決したので今後(救済について)話し合う必要もない」とした。
 最高裁は4月、強制連行の被害を認めた2審を追認しつつも「72年の日中共同声明により中国国民は裁判で賠償請求をできなくなった」との初判断を示し、同社に賠償を命じた2審を破棄して中国人側の請求を棄却した。【高倉友彰】

西松建設判決以来、日中共同声明に関する最高裁の解釈に基づく判断が続き、原告敗訴、控訴棄却が相次いでいます。同日の29日には、北海道訴訟の原告控訴棄却が言い渡されています。
このような状況のなか、今回の西松建設が事実関係をも否定するという見解を表明したことは、企業のモラルを問われる重大な問題だと思われます。


そもそも、最高裁判決文において、「被上告人らの主張する強制連行及び強制労働の実情に関し、原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである」として、以下のように述べています。

(8) 本件被害者らは、家族らと日常生活を送っていたところ、仕事を世話してやるなどとだまされたり、突然強制的にトラックに乗せられたりして収容所に連行され、あるいは日本軍の捕虜となった後収容所に収容されるなどした後、上記のとおり、日本内地に移入させられ、安野発電所の事業場で労働に従事したが、日本内地に渡航して上告人の下で稼動することを事前に知らされてこれを承諾したものではなく、上告人との間で雇用契約を締結したものでもない。(判決文P5)

最高裁の判決文においても、このように強制連行・強制労働の事実を認定されています。

この最高裁判決の主な争点は、日中共同声明第5項「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」という文言の解釈であり、最高裁の判断は、「請求権の処理については、個人の請求権を含め、戦争の遂行中に生じたすべての請求権を相互に放棄することを明らかにしたものというべきである」というものでした。
この場で、この最高裁の判断について述べるつもりはありませんが、最高裁は強制連行・強制労働の事実が無かったとも、その事実についてまったく責任が無いとも言っているわけではありません。最高裁判決では、この点に関し次のように付言しています。

 なお、前期2(3)のように、サンフランシスコ平和条約の枠組みにおいても、個別具体的な請求権について債務者側において任意の自発的な対応をすることは妨げられないところ、本件被害者らの被った精神的・肉体的苦痛が極めて大きかった一方、上告人は前述したような勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受け、更に前期の補償金を取得しているなどの諸般の事情にかんがみると、上告人を含む関係者において、本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待されるところである。

今回の西松建設の主張は事実関係として間違っていることは勿論のこと、このような最高裁が示した期待をも裏切るものであり、それ以上に強制連行・強制労働の被害者を蔑ろにするものです。中国側も注視している問題ですので、今後、大きな波紋を呼ぶことになるかと思われます。
(K−K)


▼関連記事
西松訴訟 株主総会で追及 (中国新聞 6月29日)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200706290030.html
日本の市民団体、中国人労働者への謝罪と賠償を要求 (人民日報 6月29日)
http://www.people.ne.jp/2007/06/29/jp20070629_73008.html


▼関連リンク
中国人強制連行・西松建設裁判
http://hb5.seikyou.ne.jp/home/ykkwhr/index.html
中国人戦争被害者の要求を支える会
http://www.suopei.org/index-j.html

 *参考:西松建設HP http://www.nishimatsu.co.jp/