竹島・尖閣の領有権明記、4冊のみ 中学教科書【2008.05.20】(産経新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080520-00000969-san-soci

 文部科学省が新学習指導要領の中学社会科の解説書で、竹島を「我(わ)が国固有の領土」と明記する方針を固めとともに、尖閣諸島についても検討を進めている。領有権問題を扱った地理、公民の教科書が14冊中4冊と少なく、日本の領土であることを正確に理解させるためだ。また、国定教科書竹島問題を取りあげている韓国に対抗する狙いもある。
 現在使用されている中学社会科教科書で、竹島尖閣諸島に関する領有権の記述は、地理は6冊のうち1冊だけ、公民も8冊中3冊にとどまっている。「我が国固有の領土」と明記しているには、扶桑社と東京書籍の2冊。両島が日本領になった歴史の解説は皆無だ。記述がない中堅出版社の担当者は「中学生の発達段階を考えると難しいと危惧(きぐ)した」。そのうえで「解説書で明記された場合は取りあげる」と説明する。
 これ対して、韓国では小学から高校まで「国史」は必修科目で、中学の教科書(2005年版、B5判約360ページ)では、竹島問題に1ページを割いている。韓国側の主張に立って「我が国の領土として連綿と伝わってきた」「日本は露日戦争中に一方的に領土に編入した」などと詳述している。
 韓国は昨年、日本に1年先立ち新指導要領を改定。解説書では「関連事件の考察を通し国土を守る努力の重要性を認識する。日本が継続的に国際紛争に訴えようとする意図を分析し、領土を守る方法も考えさせる」と、さらに踏み込んだ表現になっている。
 一方、日本では、竹島のある島根県が平成17年に「竹島の日条例」制定、副教材づくりを進めている。
 同県の隠岐の島町教育委員会は、郷土教育の副教材「ふるさと隠岐」を作成。町立の小中学校17校に配布し、昨年度から使用を始めた。竹島問題は「隠岐竹島・鬱陵(うつりょう)島」の項で9ページを使って詳述。江戸時代に日本の漁師がアワビ漁をした記録が残っていることなど、歴史的経緯を年表付きで解説している。
 同町立五箇中では中1地理、中3公民で副教材を活用。2月22日の竹島の日が近づくと、過去の歴史を全校生徒に指導する。「祖先が竹島で漁するなどゆかりが深い町民も多く、不法占拠は共通認識だ」(勝部由紀夫教頭)という。
 さらに、島根県教委は来年度から、竹島の領土問題などを題材にした副教材の使用する方針だ。県は「義務教育段階から勉強した方が理解が深まる」(総務課)と判断。民間団体を支援しながら、共同で副教材をつくる試みで、ビデオやワークシートの作成を念頭に作業を進める。
 平松茂雄・元防衛研究所研究室長は「郷土は教えても、その先にある国家や領土はおざなり。授業をすると自衛隊員ですら国境を正確に把握していない」と、日本の領土をめぐる教育が不十分だと指摘。「竹島尖閣を指導要領の解説書に明記するのは主権国家として当然」と話している。

(K−K)