在外被爆者除外した国の通達は「違法」 最高裁判決 【2007/11/01 朝日】

http://www.asahi.com/national/update/1101/TKY200711010345.html

戦時中に強制的に広島に連行されて被爆した韓国人の元徴用工40人(うち25人が提訴後に死亡)が、被爆者に対する援護を受けられなかったとして国に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(涌井紀夫裁判長)は1日、国側の上告を棄却する判決を言い渡した。第一小法廷は「被爆者が国内で健康管理手当の受給資格を得ても海外に移った場合には支払わない」とした74年の旧厚生省通達(03年に廃止)は違法との判断を示した。


 これにより、1人あたり120万円、総額4800万円の支払いを国に命じた二審・広島高裁判決が確定した。国が法律の解釈を誤って通達を出したことに対して国家賠償を認めた最高裁判決は初めて。原告以外の「在外被爆者」も、同じように国家賠償が認められる可能性が出てきた。

 第一小法廷は、被爆者援護を定めた当時の旧原爆2法(現在の被爆者援護法)が「居住地が日本国内であること」を援護の要件にしていないことを指摘。「法解釈を誤った違法な通達で、国の担当者には注意義務を尽くさなかった過失があった」と判断した。

 そのうえで「違法な通達が存在したために援護を受けられず、被爆による特異な健康被害に苦しみつつ精神的苦痛を受けた原告らは法的な保護の対象になる」と述べた。

 4人の裁判官のうち涌井裁判長のほか泉徳治、才口千晴の両裁判官の多数意見。甲斐中辰夫裁判官は「通達は違法だが担当者に過失はなく、法的保護に値する精神的損害も認められない」との反対意見を述べた。

 判決によると、元徴用工らは44年に朝鮮半島から連れてこられ、当時の三菱重工業広島機械製作所などで働かされた。45年8月に被爆したが戦後は帰国し、長年にわたって被爆者援護を受けられなかった。

 元徴用工らは三菱重工業に対しても賠償を求めていたが、二審判決は日韓請求権協定などを理由に退けており、第一小法廷も元徴用工側の上告を棄却した。