<強制連行>朝鮮人死者7750人の氏名判明 浜松の研究家【2007.09.16】

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<強制連行>朝鮮人死者7750人の氏名判明 浜松の研究家

9月16日3時4分配信 毎日新聞

 浜松市の近代史研究家、竹内康人さん(50)が、第二次大戦中(1939〜45年)に日本に強制連行された朝鮮半島出身者のうち、死者7750人の氏名と戦時中の労働現場1550カ所を突き止めた。旧厚生省や鉱山、炭鉱関連企業の殉職者名簿、市民団体の調査資料などを基に20年がかりでまとめ、資料集も出版された。国による名簿は公表されておらず、研究者らは「全国を網羅した初の資料」と高く評価、民間の遺骨調査での活用が期待されている。
 終戦までに、軍人・軍属として24万人以上、民間人は70万人以上が過酷な労働に従事させられたとする説が多い。このうち死者名は、旧厚生省勤労局が約9万人分の名簿を1946年に作成、91年に韓国政府に「朝鮮人労務者に関する調査」として提出した。
 しかし氏名以外のデータに乏しく、調査内容を入手した竹内さんは、▽一部の自治体に保存されていた「埋火葬認可証」▽北海道や九州などの炭鉱企業の従業員名簿▽自治体や市民団体が発行した書籍――など100点以上の資料などと照合。死者名と労働現場のほか、一部の人は本籍や死亡年月日、「落盤頭蓋(ずがい)」「魚雷」など死亡時の状況も分かった。
 死者の内訳は、鉱山・工場などの労務関係者が7割、軍事基地建設や兵士の軍務関係が3割。労働現場は、▽北海道210カ所▽福岡県140カ所▽沖縄県120カ所▽兵庫県90カ所――の順に多かった。
 04年12月の日韓首脳会談を機に、政府は厚生労働省に人道調査室を設け遺骨調査を開始。しかし同室は「個人情報の問題もあり名簿などの内容は公にできない」としている。この間、同省には寺院や自治体から1720体の情報が寄せられたが、身元判明は83体にとどまっている。
 こうした中、「竹内リスト」とも呼ばれる名簿によって、曹洞宗では各地の寺にあった計530体の遺骨のうち既に2体の身元が判明した。
 竹内さんは「判明したのは死者の一部に過ぎない。歴史の真相究明のためにも、国は積極的な調査を行ってほしい」と話している。
 資料集は、神戸学生青年センター(神戸市灘区、電話078・851・2760)が「戦時朝鮮人強制労働調査資料集」(1575円)として出版。【山口朋辰】
 ▽田中宏龍谷大教授(日本アジア関係史)の話 「外務省報告書」などで全容が判明している中国人と比べ、朝鮮人については国レベルでの調査が放置されてきた。(竹内さんが作成した資料は)全国を初めて網羅したものになるだろう。遺骨調査にも、大きなヒントとして役立つ。