Japan Warns U.S. House Against Resolution on WWII Sex Slaves(日本、第二次大戦時の性奴隷決議で米下院に警告)【2007年7月18】

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/07/17/AR2007071701802.html

ワシントンポスト紙は「日本、第二次大戦時の性奴隷決議で米下院に警告」との見出しで加藤駐米大使が下院有力議員達に宛てた書簡に関する記事を掲載しました。友人が日本語訳したものをここに許可を得て掲載致します。

日本、第二次大戦時の性奴隷決議で米下院に警告

ブレイン・ハーデン(ワシントンポスト フォリンサービス)

2007年7月18日


日本は、もし下院が、女性を強制的に日本兵のための性奴隷にした戦時の政策について公式の謝罪を求める決議案を可決すれば、おそらく日米関係は長期にわたって深刻に損なわれるであろうと下院有力者たちに警告した。


日本の加藤良三駐米大使はナンシー・ペロシ下院議員(民主党・カリフォルニア)を含む有力下院議員たちに宛てた異例に露骨な書簡で、決議案の通過は両国が現在保っている深い友誼、緊密な信頼、広範な協力に対して、ほぼ間違いなく長期的で有害な効果を持つであろうと述べた。


大使は「慰安婦」達の厳しい処遇に対して日本は1993年以来繰り返し公式に謝罪してきたと述べた。「慰安婦」は第二次世界大戦前と戦中に日本政府が強制的に慰安所(妓楼)に送り込んだ、50,000から200,000名とされるアジア女性達を指す語である。


ワシントンポスト紙が入手したこの22日付の書簡はまた、米国のイラク政策の数少ない忠実な支持者であり、米国に次いで多額のイラク復興費用を負担している日本の役割を見直す可能性を示唆している。


加藤大使は書簡で「長期的かつ有害な効果」警告にすぐ続けて、米国にとってのリスクとなりうることの一例として日本が最近イラク復興支援費の支出を更に2年間延長したことを示した。


決議案は拘束力はないが8月の議会休会の前に採決されることになっている。


従軍慰安婦に関する日本の以前の謝罪に公然と逆行する安倍晋三首相の今年の発言に対して多数の議員が怒りを表明するにつれて、法案への支持が増えた。彼は日本軍がアジアの女性を強制的に売春婦にしたということを証明する文書は存在しないと述べたのである。


156名が共同提案した法案は圧倒的多数の支持をもって先月下院外交委員会で可決され、採決に至れば容易に採択されると見込まれている。


決議案の提案者であるマイケル・M・ホンダ下院議員(民主党・カリフォルニア)は、大使の書簡はロビー活動のこけ脅しに過ぎないと一蹴し、「これが外交的にも通商上も日米関係を損なうことはないだろう」と語った。


日系アメリカ人として第二次世界大戦コロラド強制収容所に送られたホンダ議員(66)は、米国が日系市民に強制収容を謝罪したと同様に、日本は従軍慰安婦に関する自らの行為に対して公式に謝罪すべきだとして、「もし安倍氏慰安婦に強制がなかった可能性を言い張るなら、私は正式に謝罪したとは見なさない」と述べた。


決議案が「明確で疑問の余地のない謝罪」を要求していることは日本で盛んに大きく報道され大衆を怒らせた。金銭と年金のスキャンダルで、就任1年も経たずに支持率が30%を割り込んだ安倍氏にとって、この件は更なる困惑の種として今ものしかかっている。


一部の世論調査の結果は、7月29日の選挙で安倍氏を総裁とする自由民主党参議院の主導権を失う可能性を示している。選挙の前に安倍氏を困らせないように、慰安婦決議案の採択を選挙後に持ち越すことで下院の主要議員が合意したとホンダ議員は語った。


この問題に詳しい米政府当局者によると、日本政府はワシントンでのロビー活動によって、慰安婦問題についての安倍氏の発言は一政治家の遺憾な勇み足であって、1993年に始まった政府の一連の謝罪を廃棄するものではないと見るよう、下院議員を説得しようとしている。


4月の訪米のとき、安倍氏は慎重な言い回しで慰安婦がおかれた「極めて厳しい状況」に対して正式な謝罪を行ったが、日本政府の関与を示す文書による証拠はないとの立場は撤回しなかった。


米国議会調査局の昨年の報告によると,日本政府は以前の調査で慰安所の設置と女性の補充への日本軍の関与を示す100件以上の文書を開示している。


ジョージタウン大学の教授で2005年まで国家安全保障会議アジア上級部長であったマイケル・グリーン氏によれば、大使書簡は決議案によってこうむる国内の打撃をどう軽減するかについての日本政府内での激しい議論を承けたものであった。決議案をつぶすために議員に圧力をかけるようブッシュ政権を説得するのに失敗した後、攻撃的文言のこの書簡を書くことを決定したようだとグリーン氏は語った。


日米の日本政治の専門家数名の見方では、従軍慰安婦に関する安倍氏の今年の見解は、戦時の日本の行為に関する懺悔表明の外国からの要求に抵抗し憤激している、政権政党内の保守・新国家主義的な彼の支持母体に迎合しようとしたもののようである。

(梁)