外国特派員協会での日本の戦争責任資料センターによる記者会見】
 4月17日、外国特派員協会で日本の戦争責任資料センターが外国メディア向けに記者会見を行った。ゆうに百人を超える人で会場は立ち見状態となり、外国メディアの高い関心を伺わせた。その模様を簡単に伝えたい。(編集部)

 スピーカーは、
 吉見義明  中央大学教授 日本の戦争責任資料センター共同代表
 林 博史  関東学院大学教授 同センター研究事務局長
 西野瑠美子 女たちの戦争と平和資料館館長 同センター幹事
 の三名。

 まず「問題の焦点がどこにあるかを話したい」と中央大学の吉見義明教授が切り出した。

吉見義明 中央大学教授 日本の戦争責任資料センター共同代表

 最初に彼は安倍首相の立場について述べた。安倍首相は河野談話について「狭義の強制性がなかった」と言ったことを撤回もせず、また軍の関与を否定した下村官房副長官を譴責していない。安倍首相は97年に「軍政府による強制連行の事実を示す資料は全く発見されなかった」「河野談話は何の裏付けもとっていないにもかかわらず、「軍の関与」「官憲等が直接これに加担したこともあった」と発表し認めてしまったことが明らかになった」と『歴史教科書への疑問―若手国会議員による歴史教科書問題の総括』(日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会展転社)に書いた。「ここに安倍さんの基本的立場がある」。
 次に安倍首相がいう狭義の強制連行だけが問題ではなく、また暴力的な拉致だけを取りあげるのは問題の矮小化につながると指摘した。人を帝国外に移送する際の犯罪として、戦前の刑法226条では、A人身売買罪、B国外移送目的誘拐罪、C国外移送目的略取罪、D国外移送罪を同罪として規定している。安倍首相はCしか問題にしていない。また政府は北朝鮮拉致問題についてはBのケースを問題にしているが、「慰安婦」では問題にしない。
 第三に、末端で官憲が直接手を下さなくとも、軍や政府には責任があると指摘した。理由として第一に「慰安所」は軍がつくり維持・拡大し管理・監督しており、第二に「慰安婦」制度は性奴隷制だったことを挙げた。性奴隷制と言えるのは、人身売買や略取によって成り立ち、被害者は現地で性の相手を拒否する自由も、居住・廃業・外出の自由も無かったためである。
 第四に、安倍首相の言う狭義の強制は確実にあったと語った。彼は四つの例を挙げた。まず中国山西省の例。日本の裁判でも認められている。次にフィリピンの女性たちの証言で、そのほとんどは官憲による暴力的拉致のケースだ。三つ目は94年のオランダ政府報告書であり、未遂を含めて9件のケースが認められている。最後は東京裁判のケース(後述)だ。
 吉見教授は結論として、「この問題は安倍首相の人権意識が問われている」とした。まず「河野談話からの後退は許されない」と語った。とはいえ河野談話にも①女性の名誉と尊厳を傷つけた主体があいまいであり「日本軍と政府であることをもっと明確に述べるべき」こと、②政府の法的責任を認めるべきことの問題を指摘した。
 また首相の発言が「多数の女性の名誉・尊厳をいま再び傷つけていると思う」とし、政府が「未来、人権のための、明確なメッセージを出す必要がある」と言った。政府はアジア女性基金に関して政府として協力するという閣議了解があるだけで、その他「慰安婦」問題についての決定は皆無だという。「これはビックリするような事態。もっとハッキリとした明確な政府としてのメッセージが必要」。
(つづく)