寄せ書き日章旗「返したい」 「祈 武運長久」「高島貞夫君」【2008.03.08】(産経新聞)

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■吹田出身のデザイナー 米から持ち帰る
 米ニューヨーク在住の日本人女性が現地の骨董(こっとう)品店で11年前に購入した日章旗の“持ち主”を捜している。旗には横書きで「祈 武運長久」の文字や「高島貞夫君」などの名前が書かれており、血痕のようなシミもついていた。太平洋戦争で日本兵が戦地に持ち込んだものとみられるが、旗が米国で見つかった経緯などは不明。女性は「元の持ち主か家族に早く返してあげたい」と情報提供を呼びかけている。
 日章旗を見つけたのは、大阪府吹田市出身のデザイナー、フルーデ(旧姓石黒)とき子さん(33)。
 ニューヨークのデザイン大学に通っていた平成9年、日本をモチーフにしたガラス細工を作るため、マンハッタンのミッドタウンにある日本の骨董品を扱った「THNGS JAPANESE」という店を訪問。店の片隅に置かれていた日章旗に強くひかれ、80ドルで購入した。店員の説明によると、あるアメリカ人の遺族から寄付として受けたものという。
 日章旗は縦約70センチ、横約100センチ。墨書きで「祈 武運長久」「高島貞夫君」と大書された横に、「石忍必勝 志村寅次郎」と記されている。また、日の丸を囲むように「早川政次」「黒坂金松」「恩田一義」など16人分の寄せ書きがつづられている。旗の上下部には血痕のようなシミが複数残っていた。地名や所属隊名は書かれていないが、太平洋戦争で戦地に赴く「高島貞夫」さんの無事を祈願して贈られたものとみられる。
 フルーデさんは、太平洋戦争で中国に出征した祖父が昨年亡くなり、次第に“戦争世代”が消えていくことを痛感。それまでニューヨークの自宅の引き出しに保管していた旗を一時帰国した日本に持ち帰り、持ち主を捜し始めた。
 フルーデさんは「この日章旗の持ち主は、当時の私と同世代だったはず。悲痛な思いで戦地に渡ったが、何らかの事情で、旗だけが本人の身を離れてアメリカへ渡った。そのことを考えると、胸が張り裂けそうな思いがする」と話した。
 情報はフルーデさんの実家、石黒さん方(TEL06・6877・0612)へ。